行政マンのダウン症育児日記(15:2005/11/11記)
パパと2人はかわいそう?
天気のいい日曜日、3人でバラ園に出かけた。
向ヶ丘遊園が廃園になったのは有名だけど、中にあったバラ園は残っていたって、みなさんご存知でしたか?何でも小田急と行政、地元住民が話し合って、バラ園を存続させ、春と秋の年2回一般に無料開放をすることになったのだそうだ。手入れだけでも大変だろうに、関係者の苦労がしのばれるというものです。
さてさて、その日は久しぶりの快晴で、日差しが強く、10月後半にしては暑いぐらいの陽気で、これが後に失敗の原因となった。
それはあとに話すとして、はじめて行ったバラ園は、色とりどりの珍しいバラが咲いていて、芝生には家族連れが大勢いた。われわれ3人も持参したレジャーシートに座ってお弁当。歩は芝生に転がしてみたものの、芝が痛いのか一風変わったポーズで写真に納まった。
自転車による、いわゆるお出かけは、初めてのことで、歩はちょっとご機嫌斜めだったけど、まあこんなものかなと話しながら帰途に着いた。
事態は夜に急展開を見せる。
帰宅後あんまり元気がない歩は、飲んだミルクも派手に戻し、明らかにぐったり。強い日差しが悪かったのか、自転車で長く揺られたせいか、いずれにしても明日は病院に行くことになりそうだ。朝はあんなに元気だったのに…。体調を崩すのはいつも日曜日だなあ。
で、翌日。
妻がどうしても休めないというので、久しぶりに看病の役が回ってくる。職場に電話をかけ、身の回りの準備をしたら、タクシーを呼ぶ。その間も歩は布団に寝転んで、寝返りすら打たない。病院に着くと、かかりつけの医者が回診日ではないとのこと。別の医者をお願いして待合室でしばし待つ。
小児科の待合室は、子ども母親が多い。当然といえば当然なんだろうけど、父親は、母親にくっついてきているのがチラホラ見える程度で、父親だけで子どもを連れているパターンは見当たらない。待合室はカーテンに仕切られていて、隣がなんと授乳室。機能的といえば機能的だけど、なんだか肩身が狭い。
そうこうしているうちに診察室に呼ばれて、問診を受ける。症状を話し、脱水があるために点滴を打つことになる。別の部屋に移り点滴開始。2時間程度かかるとのこと。ついでに血液検査も受ける。
しばらくして検査の結果も出て、とりあえず入院は免れる。ただし明日も受診することに。薬を1日分だけもらう。タクシーで帰宅。
それにしても小児科は本当に大変だ。子どもはどこが痛いとか、なにが辛いとか言わない。ただ泣くだけで、もっとひどくなると、ぐったりしてくる。なにを食べ、どんな便をして、状態はどうか、熱や咳はあるかなどなど。事細かに親が伝える必要がある。もちろん検査をすればわかることもあるが、本人の意思表示が言語を介して行われないわけで、それを読み取るスキルが要求される。
まあでも、今日はいろいろと助かったこともあった。
看護士さんはかなり気を遣ってくれたし、薬局では薬剤師さんがカウンターから出てきて親切に薬の説明をしてくれた。帰りのタクシーの運転手さんは、歩が咳き込んで戻しそうになっているのを見て、親身になって心配してくれ、子育ての苦労話なんかもしたっけ。
夕食を食べながら、そんなことを妻と話していると、
「もしかして、父子家庭に間違われたんじゃない?」という話になった。
そういえば、タクシーを降りる時に運転手さんが「頑張ってな」って言ってたっけ。あれは病気で辛そうな歩にじゃなくて、子育てで苦労している自分に対しての言葉だったのか?だとすると、なんだか複雑だ。
彼がこの文章を読んでいる可能性は極めて低いけど、ここは1つ説明しておく必要があるな。
「タクシーの運転手さんへ
わが家は、妻と自分と歩の3人、仲良くやっています。2人とも仕事のやりくりは大変だけれども、支えあいながら何とかやっています。今日はたまたま、自分が付き添っただけで、別に父子家庭ではありませんよ。ましてや妻はまだ生きていていて、死に別れたわけでも、不仲なわけでもありませんから、そこのところ、くれぐれも誤解のないようにお願いします。
ちょっと大変そうに見えた若い父親より」