行政マンのダウン症育児日記(3:2005/4/28記)
心臓の手術1
「あっ、あっ、あっ!」
さっきから歩が「パパ遊んで!光線」を発してる。しばらく無視しているとあきらめたのか、脇にあるガラガラを思いっきり壁にたたきつけはじめた。
「ガラガラガラ…、カランコロンカラン、ガシャン!ガシャン!ガシャン!」
ひとり遊びはいいけれど、なんてうるさいんだ!!
今日は日曜日。外はすっきり快晴なのに、体調不良で午前中からリビングで横になっている。頭が痛くて、ちょっと寒気がする。風邪だよなー。
妻はといえば、昨日に引き続き、友人の披露宴に出かけて不在。本日の予定帰宅時間は、22時。結婚式から、披露宴、2次会までのフルコースだ。
こんなときでも、育児に「休日」はない。
お腹が空けば鳴くし、眠たくなればぐずり、オムツの交換もひっきりなしだ。いつもは微笑ましく見ていられる、歩のしぐさも、今日はうるさいだけ。
それにしても元気だ。生後11ヶ月になるけれど、発熱はまだなく、体調を崩している様子はみられない。いっそのこと風邪をうつしてやろうかしら。そうすれば、少しは静かになるかも…。
そんな歩の健康を語るとき、手術のことは避けて通れない。
生後数日で、小児科の先生から「心臓に穴が開いている。半年以内に手術が必要」と告げられ、結局、4ヵ月後の8月29日に手術をすることになる。
病名は、心室中核欠損。
左心室(全身にきれいな血液を送り込む部屋)と右心室(全身から戻ってきた汚い血液を肺に送り込む部屋)の間の壁に穴が開き、血が混ざってしまう病気だ。ダウン症の子に限らずわりとよくある病気で、小さな穴の場合は自然に閉じてしまうことも多いとか。歩の場合は直系が1㎝近くあり、パッチを当てて穴をふさぐ必要があった。
まず自分たちが取り掛かったのが、情報収集。手当たり次第に友人知人に相談して、おおよそのあたりをつけた。
それから最近流行の病院ランキングも参考にした。
心臓の手術の場合、数がものをいう世界で、成否の鍵は何例手術の経験があるかにかかってくる。また、大人の心臓病と、子ども(ほとんどが乳幼児)の心臓病ではかなり性質が異なるため、子どもの手術を年間どのくらいこなしているかが重要になってくる。
そして最後は、自分の目で確かめに行った。実際に病院に足を運び、スタッフの応対から、病棟の様子、入院のシステムなども直接話を聞いた。
最終的に決めたのが、調布にある循環器専門のS病院。自分たちにとって、何より歩にとって最良の選択だと判断したからだが、それはそこ、最良の選択を求めるがゆえに、途中で揺れもした。
手術に失敗は許されない。
執刀医にとって、何例もあるうちの1つに過ぎなくとも、自分たちにとっての歩はたった1人の子ども。どんな小さなリスクでも、できうる限り排除し、考えられる最高の条件で手術に望みたいと願った。
結果から言えば、自分たちの選択は大正解といえる。
でも、そこにいたるまでは大変だったんです。ほんと…。
というわけで以下次回に続く。