行政マンのダウン症育児日記(4:2005/4/28記)
心臓の手術2
さてさて、心臓の手術の続きを。
歩の病名が「心室中隔欠損」で、左心室と右心室の間の壁(中隔)に開いた穴をふさぐ必要があった、ということは前回書いた。
で、どんな手術を受けたかというと…、
胸を開いて、
心臓を止めて、
血液を人工心肺に回して、
その間に心臓も開いて、
そして中隔に開いた穴をパッチ(布のようなもの)で塞ぐ、
というもの。
書いているだけでもクラクラしてくるけれど、それを体重4キロにも満たない乳児に施すというのだから、とんでもない話だ。
ちょっとでも手元がくるって、大切な血管を傷つけたらどうする?
人工心肺が止まっちゃって、脳に酸素がいかなくなったらどうする?
院内でウイルスに感染して、それが心臓に回ったらどうする?
輸血した血液がもとで、別の病気になったらどうする?
看護婦さんがミスって、点滴を間違えたらどうする?
手術中に地震がきて、停電になったらどうする?
どうする?どうする?どうする?…
くだらない質問から、めんどくさい質問まで、主治医の先生はよく我慢して付き合ってくれたと思う。どんなに質問しても不安が完全に解消されることはないけれど、ただ、これだけ一生懸命に考えてくれて、こんなに良くしてくれる人達になら、任せてもいいかなと、最後は思えた。
そして8月27日、手術の日を迎える。
その日はとってもいい天気で、妻の実家から義母、義姉が、自分のほうは父親が付き添いに来てくれた。
歩の手術は朝一番。
8時過ぎには眠り薬を飲まされて、お気に入りの羊のぬいぐるみユキちゃんと一緒に、手術室の扉の向こうに消えて行った。
それにしても、生まれて半年も経たない歩がこんなに大変な経験をしているのに、自分はたいしたこともしてやれない。せめて側についていて、寂しさや不安を少しでも和らげて上げたいと思った。
朝一番だったけど、手術の待合室は他にも付き添いの家族がいて、どの顔も祈るように真剣そのもの。
自分たち家族も、少しばかり世間話もしたけれど、結局考えるのは歩のこと。
考えれば考えるほど、悪いほうに思考は向かう。
上手くいくのかなあ。
失敗したらどうしよう。
上手くいかなかったらどうしよう。
失敗したらどうしよう。
そうこうしているうちに、あっという間に手術は終わった。
「宗片歩くんのご家族の方いらっしゃいますか」
若い看護士さんが手術室から出てきた。
「では、お父さんとお母さんだけ、手術室にお入りください」
ベットの上に、歩がいた。
全身から管が伸び、口は酸素チューブでふさがれ、手足を固定されて、歩がいた。
なんて痛ましい…。
でも、本当に良く頑張ったね。
そのときの写真は、もちろんないのだけれど、脳裏にしっかりと焼きついている。きっといつまで経っても、歩の痛ましい姿は、鮮明な絵となって蘇ってくるのだろう。
そう、生後たった4ヶ月しか経っていない歩が、生きる力を証明して見せてくれた、その事実とともに。
生きてるって、すごいことですね。